2011年にプロテストに合格し、2017年のヨネックスレディスでプロ初優勝を果たした青木瀬令奈選手。その後、しばらく優勝から遠ざかっていましたが、2021年宮里藍サントリーレディスで優勝すると、2022年には資生堂レディスを、2023年にはTポイント×ENEOSレディス、大王製紙エリエールレディスの2大会を制しました。
近年の女子プロツアーは若手プロの活躍が目立っていますが、2023年シーズンは、青木瀬令奈選手が藤田さいき選手とともにベテランの意地を見せています。
ゼクシオドライバーを使用するなど「ゼクシオの顔」としても知られる青木瀬令奈選手は、ダンロップとクラブ契約を結んでいます。今回はこの青木瀬令奈選手の2023年版のクラブセッティングをご紹介します。
青木瀬令奈プロのクラブセッティング(2023年版)
青木瀬令奈選手のクラブセッティングはかなり細かく細分化されていて、ダンロップのスタッフとかなり細かくフィーリングなどを検証していることがわかります。
アイアンは8番〜PWのみで、それ以上のクラブはユーティリティーやフェアウェイウッドを使用しています。これは飛距離が出ないドライバーに対して、残りの距離を正確にショットするために細かくセッティングしているからです。
メーカー | クラブ名 | シャフト | |
ドライバー (9.5°) | ダンロップ | ゼクシオ エックス | VENTUS RED (R) |
フェアウェイウッド(3番15°) | ダンロップ | スリクソン Z F85 | ATTAS COOL 6 (R) |
フェアウェイウッド (5番18°, 7番20°, 9番23°) | ダンロップ | ゼクシオ 10 | ATTAS COOL 6 (R) |
ユーティリティー (5番25°, 6番28°) | ダンロップ | スリクソン Z H65 ハイブリッド | ATTAS MB-HY65 (R) |
ユーティリティー 6番(30.5° ※28°から調整) | ダンロップ | スリクソン ZX ハイブリッド | ATTAS MB-HY65 (R) |
アイアン 8番 | ダンロップ | スリクソン ZX5 Mk II | N.S.PRO 750GH (S) |
アイアン 9番,PW | ダンロップ | スリクソン ZX7 Mk II | N.S.PRO 750GH (S) |
ウェッジ(52°, 58°) | グラインドスタジオ | プロトタイプ | N.S.PRO 850GH (R) |
パター | キャロウェイ | オデッセイ ホワイト・ホット OG #1WCS | |
ボール | ダンロップ | スリクソン Z-STAR XV |
ドライバー(9.0°):ゼクシオ エックス(ダンロップ)
人気のゼクシオシリーズでは11代目からは「ゼクシオ11」と「ゼクシオX(エックス)」の2タイプが発売されました。12代目発売時にも「ゼクシオ12」と同時に「ゼクシオX」が新タイプに変更され、青木瀬令奈選手はこの新タイプの「ゼクシオX」を使用しています。
「ゼクシオX」はヘッドスピードが速めのゴルファー向けに開発されていて、それまでの「ゼクシオは万人向けのクラブ」言われていたクラブから差別化が図られています。このシリーズの特徴は、空力をコントロールするための「アクティブ・ウイング」と反発性能を高めるための「リバウンド・フレーム」です。
「アクティブ・ウイング」はクラウンのヒール側の突起が、スイング中の空気の流れをコントロールします。「リバウンド・フレーム」はヘッドのたわむエリアと、支点となる硬いエリアを交互に配置することで、反発性能を高めるテクノロジーです
また、「ゼクシオX」と「ゼクシオ12」の違いとしては、「ゼクシオX」がストレートフェースなのに対し、「ゼクシオ12」はややフックフェースになっていること。打球音も「ゼクシオX」が引き締まった音であることに対して、「ゼクシオ12」は高く伸びる打音になっています。
さらに、青木選手のドライバーの特徴はフレックスがRだということです。女子プロでも多くがSを使っている中でRを使っているのは、振り抜けの感覚が良いからとのことです。
フェアウェイウッド(3番15°):スリクソン Z F85(ダンロップ)
「スリクソン Z F85」は2018年に発売されたフェアウェイウッドで、青木瀬令奈選手は2019年からこのフェアウェイウッドを使い続けています。
「スリクソン Z F85」のクラウンには比重の軽いカーボンが使われており、より低スピンの強い弾道を狙った設計になっています。
2020年に「スリクソンX」が発売されて、ドライバーを「X」に変更したにも関わらず、3番ウッドには1代前の「Z F85」を使っているのは、感覚がフィットしているからだと考えられます。青木選手は飛距離が出る選手ではありませんが、高いミート率で飛距離を稼いでいます。そのため、自分の感覚でミート率が高いクラブを選択しているのでしょう。
フェアウェイウッド(5番18°, 7番20°, 9番23°):ゼクシオ 10(ダンロップ)
青木瀬令奈選手は、2019年ダイキンオーキッドレディスで2回目の優勝をしたときから現在まで「ゼクシオ10」のフェアウェイウッドを使い続けています。
発売当時、ダンロップはこの「ゼクシオ10」フェアウェイウッドを「ボールを芯で捉えて大きく飛ばす『飛びの“芯食い体験”』を提供する」と案内しています。ミート率を重要視する青木選手にとっては最適のクラブなのかもしれません。
ユーティリティー(5番25°, 6番28°):スリクソン Z H65 ハイブリッド(ダンロップ)
青木瀬令奈選手はロフト角のセッティングをかなり細かく行っています。9番ウッドのロフトが23°なのに対して、5番ユーティリティーのロフトは25°です。その差は2°しかありません。5番と6番の差は3°なので、この部分にこだわりがあるのでしょう。
「スリクソンZ H65」は2016年に発売されたユーティリティーで、青木瀬令奈選手にとって愛着があるクラブとなっています。このハイブリッドには「アークサポートチャネル(溝構造)」が採用され、センター打点と上打点での飛距離のバラつきが少なく距離感が安定します。また溝の深さは番手によって異なり、高い番手ほど溝が深く設計されスピン量の安定を図っています。
ユーティリティー (6番30.5°):スリクソン ZX ハイブリッド(ダンロップ)
青木瀬令奈選手は、6番ユーティリティを2本クラブセッティングに入れています。ただし、「スリクソンZXハイブリッド」の6番はロフト角がカスタマイズされていて、通常28°である角度を30.5°に寝かしています。(カスタマイズされた6番ユーティリティーをセッティングする代わりに、7番アイアンはクラブセッティングから抜かれています。)
「スリクソンZXハイブリッド」には、4層構造の「REBOUND FRAME」を採用することで反発性能を向上させ、ステップ形状のクラウンにより重心を最適化し、高い打ち出しと安定したスピンでグリーンを狙えるように設計されています。
アイアン(8番):スリクソン ZX5 Mk II(ダンロップ)
青木瀬令奈選手は9番アイアン〜PWまでをクラブセッティングに入れています。8番アイアンには飛び系で、寛容性と飛距離性能が高い「スリクソン ZX5」を使用しています。飛距離が出ない青木選手は、簡単な上できるだけ飛ぶクラブを選択していると考えられます。
アイアン(9番, PW):スリクソン ZX7 Mk II(ダンロップ)
青木瀬令奈選手は、8番アイアンとは違って、9番アイアンとPWには「スリクソン ZX7」を使用しています。「ZX7」は重心がやや浅く、低スピンの強弾道という特長があります。
青木瀬令奈選手の他、畑岡奈紗選手や小祝さくら選手などもこのアイアンを使用しています。
ウェッジ(52°, 58°):グラインドスタジオ プロトタイプ(グラインドスタジオ)
ウェッジは大手のメーカー製のクラブではなく、「グラインドスタジオ」のウェッジを使用しています。同ウェッジは群馬県にあるゴルフ工房で製造されるウェッジであり、穴井詩選手なども使用している地クラブです。
青木瀬令奈選手はプロになる前からこのクラブを使用しており、グースネックでありバックフェースがストレート気味になっていることが特徴的です。
パター:オデッセイ ホワイト・ホット OG #1WCS(キャロウェイ)
青木瀬令奈選手は2023年に優勝した「Tポイント×ENEOSゴルフ」では「オデッセイ ホワイト・ホット OG #1WCS」を使用しましたが、開幕戦からは3試合程度はそれぞれ違うパターを使用したようです。
青木選手は6本程度もっているパターの中から自分の調子、試合会場のグリーンの状況などから使い分けをするそうです。ちなみに2022年に優勝した「資生堂レディス」では「トリプル・トラック TEN」を使用していました。
ボール:スリクソン Z-STAR XV(ダンロップ)
「Z-STAR XV」はZ-STARシリーズの中でも飛びにフォーカスした設計になっています。
高反発「高反発ファストレイヤー大径2層コア」によりボールの初速をアップさせる一方、「次世代Spin Skinコーティング with SeRM」を採用して優れたスピン性能も発揮するように設計されています。
ツアープロの中ではタイトリストの「ProV1」シリーズと並んで人気の高いゴルフボールです。
青木瀬令奈プロのクラブセッティングは飛距離が出ないアマチュアの参考に◎
青木瀬令奈選手が優勝した2023年「Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント」では予選を通過した54名の中で、ドライバーの平均飛距離は最下位でした(214ヤード)。
また、飛距離が出ないためパーオン率も低く、2023年10月時点での成績ではツアー出場選手の中で84位です。そのかわり平均パット数は全選手の中で1位です。また、フェアウェイキープ率も5位と正確性を保っています。
つまり、飛距離が出れば有利なことは間違いありませんが、飛距離が出なくても好成績を残せるということをデータが証明しています。青木瀬令奈選手のクラブセッティングは無理に飛ばそうとはしないで、確実にパーが取れる場所を狙う、という戦略に基づいた選び方と言えるでしょう。
これは数多くのアマチュアゴルファーにも参考になるデータでもあります。ぜひ青木瀬令奈プロのクラブセッティングを参考にして、パーやボギーを確実に拾う堅実なゴルフを目指してみてはいかがでしょうか?